その他のシール
解説編
ダイアフラム
ダイアフラムとは
ダイアフラムとは運動する部品と静止している部品のすきまにはられた分離用の薄膜で、これによって2つの領域や室にある液体や媒体がお互いに混ざり合うのを防ぐものです。
ダイアフラムの分類
ダイアフラムは以下の3つに分類されます。
- もっぱら分離するのが目的で、2つの室の間の圧力差のないもの。
- 分離膜として作用する固定用ダイアフラム。運動はほとんど受けないもの。
- 動く部品と静止している部品の間を密封するために使用される運動用ダイアフラム。この場合、一般に力や圧力の伝達も行う。
ダイアフラムを分類するもうひとつの方法として、平形ダイアフラム(Flat diaphragm)と転動形ダイアフラム(Rolling diaphragm)とに分ける方法があります。平形ダイアフラムとは折り返し部分を持たないか、あるいは180度以下の折り返し部しかもたないものをいいます。転動形ダイアフラムとは180度折り返されるもので、シリンダとピストンが相対運動するとき、ダイアフラムの一方の面はシリンダまたはピストンの側壁から転がり接触しながら離れ、もう一方の面は側壁と転がり接触し始めるような構造に作られたものです。
ブーツ
ブーツとは
ブーツとは揺動と回転、あるいは往復動を伴う継手部分の潤滑剤の密封、および外部ダストの侵入防止に用いられます。また、継手以外で変位を伴う2部材間の外部ダストの侵入防止に用いられる場合もあり、用途は多岐にわたります。このため、自動車、家電製品、建機、農機、製鉄機械などに広く使用されており、使用環境条件、稼動条件にマッチした形状と材料の選択が性能を左右します。
ブーツに要求される一般的事項
ブーツに要求される一般的事項としては
- 密封対象油・グリースに対して耐性があること。
- 環境温度に対して耐性があること(耐油・グリース性)。
- 耐オゾン性、耐水性に優れていること。
- 疲労性、耐摩耗性に優れていること。
- 固定部の耐永久歪み性に優れていること。
があり、ゴム材料としてはクロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム(VMQ)、があります。熱可塑性エラストマーとしてはポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)があります。
ブーツの代表的な形状例を示します。
ダストカバー
ダストカバーとは
自動車やトラクターなどの農機、フォークリフトに代表される建機などのサスペンション装置、およびステアリング装置などに、継手機構としてボールジョイントが使用されています。このボールジョイントの滑面保護のための潤滑材(グリース)の流出防止、および外部からの泥水や埃の侵入防止を目的として、ダストカバーを使用します。
ダストカバーに要求される一般事項
ボールジョイントはサスペンションやステアリング部分に使用されているため、ダストカバーは水やダストがかかり、温度としては冬場は-40℃、夏場は+70℃程度になります。また大気中のオゾンにもさらされることになります。したがってダストカバーに要求される材料特性としては、耐オゾン性、耐熱性、低温性、耐ヘタリ性、耐摩耗性、耐水性、耐油性が求められ、一般的にはクロロプレンゴムが使用されます。
金属ベローズ
金属ベローズとは
金属ベローズは文字通り金属製のジャバラで、メカニカルシール、バルブ、ジョイント、アキュムレータなどのさまざまな機械要素の一部品として用いられています。金属ベローズの種類としては、その製作方法から、溶接ベローズ、成形ベローズの2種類に分けられます。
溶接ベローズ
■特徴
- 内外径寸法、スパン(山の高さ)および板厚などが自由に選択できるので、特性の設定が容易です。
- 全面密着可能なものが得られるため、自由長当たりの伸縮量が大きくとれ、コンパクトな設計ができます。
- ヒステリシスが小さく、ばね直線性が良好です。
- 材料の選択幅が広く、耐食性、耐薬品性、および耐熱性など適切な材質対応ができます。
- 材料歩留まりが悪く、溶接による製作工数が多いので量産性に乏しく、コスト高になります。
■製作法
薄い金属板をプレスで打ち抜き、内径、外径を交互に全周溶接(母材同士の溶融溶接)して製作します。
成形ベローズ
■特徴
- 量産性に優れ、低コストです。
- 品質の信頼性が高く、特性のばらつきを少なくできます。
- 内外径寸法、板厚に限界があるため、ばね定数の範囲が狭くなります。
- 型費用、深絞りの工数がかかるため、小ロットの生産には適しません。
- 絞り加工性のよい材料を選択する必要があるため、材料の選択幅が狭くなります。
■製作法
深絞りまたはシーム溶接により薄肉のパイプを製作後、液圧によるバルジ成形またはロール成形により製作します。
ベローズ材料の一般特性
(各材料の特性は以下の通りです)
材質 | 種類 | 耐食性 | ばね性 | 疲労強度 | 高温特性 | 磁性 |
---|---|---|---|---|---|---|
オーステナイト系 ステンレス | 溶接ベローズ 成形ベローズ | ○ | ○ | ○ | ○ | なし |
析出硬化型ステンレス | 溶接ベローズ | ◇ | ◎ | ◎ | ◇ | あり |
インコネル | 溶接ベローズ 成形ベローズ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | なし |
ハステロイC22 | 溶接ベローズ 成形ベローズ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | なし |
アルミニウム | 成形ベローズ | ◇ | △ | △ | ◇ | なし |
チタン | 溶接ベローズ | ◎ | ○ | ○ | ◎ | なし |
リン青銅 | 成形ベローズ | △ | ○ | ○ | △ | なし |
ベリリウム銅 | 成形ベローズ | ◇ | ◎ | ◎ | ◇ | なし |
- (注1) ◎:優、○:良、◇:可、△:用途により可を示します。
- (注2) 析出硬化型の場合、析出硬化温度(材質 により400~700℃)になると特性が変化します。
- (注3) 成形ベローズの場合は、材料の加工硬化性を期待した特性です。高温(400℃以上)の雰囲気になると、加工硬化性が徐々に失われ、ばね性が失われていくので、注意する必要があります。