シールの標準化の動向

1.国際規格の動向

ISO(国際標準化機構)は国間の規格の違いをなくすことを目的に標準化を進めている。一般のシールに関する国際規格は表1に示すISO/TC 131(Fluid power systems and components)の中のSC7(Seal Devices)委員会が担当し推進している。

1.1 Oリング

Oリング関係の規格はSC7のWG3(Design criteria for standard O-Ring applications)が起案・改正を担当しています。
OリングのISO 3601/1についてアメリカより航空宇宙(Aerospace)用の寸法追加の要請がありましたが、要求仕様・取り扱い条件等異なることから、航空宇宙仕様については航空宇宙用を担当しているTC20/SC10委員会に対応をSC7事務局を通し依頼しています。
ISO/DIS 3601/2(ロッド及びピストンの溝寸法)についてミリ寸法に合致しづらいという理由で真のミリ用Oリングの提案(ISO/CD 15272)がイギリスからあり、検討されたがアメリカをはじめとする主要な国からの反対が多く、1997年のサンアントニオ会議でISO 3601/1との関係について再度審議されましたが、新たなミリ用Oリング規格は不要であるとの意見が多くISO/CD 15272は破棄されました。このことから、スウェーデンが幹事を降り代わって現在ドイツが幹事を引き受けWG3の運営に当たっています。
ISO 3601/3(品質許容限度)については適用範囲の見直しが行われ近々改正版が発刊されます。
ISO/CD 3601/4(Hシリーズ:Fitting用のOリング規格)については、特殊用途の規格であり、SC7委員会の取り扱いから外しFitting関係の規格を担当しているSC4委員会に移しました。
ISO/DIS 3601/5(バックアップリング)及びISO/DIS 3601/6(推奨材料)の規格案については現在審議が行われており、近々規格化される予定です。

1.2 オイルシール

オイルシール関係の規格はSC7のWG4(Rotary shaft lip type seals)が起案・改正を担当しています。
オイルシールのISO 6194/3については5年の定期見直しがありましたが特に問題がないことから改正なしで更新されるものと考えます。
ISO 6194/4については5年の定期見直しに当たりイギリスより大幅な改正案が提案され、現在改正案の審議が行われています。
また、熱可塑性シーリング材オイルシールについてはISO/DIS16589/1(寸法及び許容差)、ISO/DIS 16589/2(用語)、ISO/DIS 16589/3(保管、取り扱い及び取付)、ISO/DIS 16589/4(試験方法)、ISO/DIS 16589/5(外観欠陥)が規格化されています。

1.3 パッキン

パッキン関係の規格はSC7のWG2(Dimensions for seal housings)が起案・修正を担当している。
パッキンのISO 6195について1998年12月のパリ会議で議長国(イギリス)から改正案の提示が提出され、また、ドイツからElastomer-energised plastic face wiper rings形状の追加提案があった。市場の実績からドイツの提案を受け入れることになり、ドイツが溝寸法と公差表を再作成し提出することになった。
シール関係の主なISO規格を表2に示す。

2.国内規格の動向

一般シールの国内規格の主なものは(社)日本フルードパワー工業会が担当しており、一部オイルシールについては(社)日本自動車部品工業会が(社)日本フルードパワー工業会より委託を受け対応している。
近年、経済産業省では貿易摩擦の緩和策として国際規格(ISO)との整合を図っており、国内規格(JIS)、団体規格について定期見直し時にはISOとの整合を指導している。また、国内規格が無いものについては国際規格の翻訳をJISにする動きがある。パッキン関係ではISO 10766(油圧-シリンダ-ピストン及びロッド用ウェアリングのハウジング寸法)が既に翻訳されJIS B 8663として発刊された。また、ISO 5597(油圧-シリンダ-往復動用ピストン及びロッドシールのハウジング-寸法と許容差)、ISO 6195(油圧・空気圧システム及び機器-シリンダ-往復動用ワイパリングのハウジング-寸法と許容差)等が翻訳され化される予定である。
JIS B 2408についてもISO 6301/3の見直しに伴い、適用範囲が近い内に改正されると考える。
シール関係の主なJIS規格を表3に示す。

3.団体規格の動向

団体規格はJIS規格がないもの、また、JIS規格で詳細が決まっていない部分を補うことを目的に作られている。
シール関係の規格の内、オイルシールとOリングについては(社)自動車技術会、パッキン関係については(社)日本フルードパワー工業会が対応している。
尚、(社)日本フルードパワー工業会で発行しているJOHSとJPASは新規格よりJFPSに統一される。
シール関係の主な団体規格を表4に示す。

4.その他(国外の規格)

市場でよく使われるシール関係の主な国外規格を表5に示す。