非金属タイプスクィーズパッキン

解説編

非金属タイプスクィーズパッキンの特徴

非金属タイプスクィーズパッキン(ゴムガスケット)は高温や低温での材料選定を必要としますが、他材料に比べて軟質なため、比較的小さな力で組込め、しかもシール性が良好なことが特徴です。 種類としてはシートガスケット、液状接着ガスケット、Oリングなどがあり、Oリングと類似するものにはねじれ防止や溝座り性から、Dリングや角リングがあります。 スクィーズパッキン最も簡便な代表であるOリングを取り上げて、その選定法、使用方法をご紹介します。 固定用Oリングは用途や種類が非常に多く、家庭製品から自動車、産業機器、航空機など、あらゆる分野で古くから使用されています。

Oリング用材料に要求される性質

Oリングは押しつぶすことにより発生する応力によって密封機能を発揮していますので、異常な変形を起こさない範囲で、適度な応力を持つことが、基本的に要求される性質です。 そしてこのような性質は、使用中も失われないことが要求されます。 このような性質をもつ材料としては合成ゴムが最も優れています。しかし、これらの性質を一つの材料で、すべてカバーすることはむずかしいので、それぞれの用途に応じて材料を使い分ける必要があります。 NOKはあらゆる使用条件に適応できるように、各種の材料を用意しております。

NOK・Oリングの種類

NOK・Oリング(規格品)のサイズはJIS、ISO、JASO、AS並びにNOK規格によって構成されています。

分類用途 一般機器用
Oリング 規格 JIS B 2401 ISO (一般工業用) NOKアイアンラバー P,G規格 (JIS B2401 準拠) NOK S規格 NOK SS規格
材料別 JIS記号(用途) 材料記号 材料記号 材料記号
1種A(耐鉱物油用) 1種B(耐鉱物油用) 2種(耐ガソリン用) 3種(耐動植物油用) 4種C(耐熱用) 4種D(耐熱用) A305 U565 U801 A305 F201
用途別 ・Pシリーズ  (運動用・固定用) ・Gシリーズ  (固定用) ・Vシリーズ  (真空フランジ用) 固定用 ・Pシリーズ  (運動用・固定用) ・Gシリーズ  (固定用) ・Sシリーズ※  (低圧固定用) ・SSシリーズ※  (低圧固定用)
Oリング取付けみぞ部の形状寸法 ・JISB2406 (運動用・固定用) ・JISB2290 (真空フランジ用) ・JISB2406 (運動用・固定用) ・NOK S規格 ・NOK SS規格
バックアップ リング ・JIS B 2407
T1(スパイラル) T2(バイアスカット) T3(エンドレス)
分類用途 自動車用 航空機用
Oリング 規格 JISO F404 AS568 (旧ARP568)
材料別 JASO記号(用途) 材料記号
1種A(一般鉱物油用) ― 2種(耐ガソリン用) 3種(耐植物油用) 4種C(耐熱用) 4種D(耐熱用) 4種E(耐熱用) 5種(耐クーラント用) H *(耐摩耗用) A305 A105 F201
用途別 ・線径φ1.9シリーズ  (旧1000番シリーズ) ・線径φ2.4シリーズ  (旧2000番シリーズ) ・線径φ3.1シリーズ ・線径φ3.5シリーズ  (旧3000番シリーズ) (用途は全て運動用、固定用) 固定用 (旧AN6227は運動用)
Oリング取付けみぞ部の形状寸法 JASOF404
バックアップ リング

NOK・Oリング材料の種類と特徴

NOKでは、JISおよびJASO規格に相当する材料を標準材料として準備するとともに、広範な使用条件に応じられるように、各種の特殊材料を用意しております。その代表的なものを以下に示します。これ以外の特殊用とについても、材料をそろえておりますので、最寄りの営業所までご相談下さい。

種類 NOK 材料記号 ゴムの種類 特徴 JIS規格
B2401記号
標準材料 A305 ニトリルゴム 最も代表的な材料で優れた耐油、耐摩耗性と安定した耐熱性を有しています。また、NOK空圧用Oリングの標準材料です。 1種A
A105 ニトリルゴム A305とほぼ同等な性質を有し、A305よりも硬度が高く、耐圧性に優れた材料です。 1種B
A122 ニトリルゴム 灯油、軽油等の燃料油に優れた耐性を有する一般燃料油用の材料です。 2種
R189 スチロールゴム エチレングリコール、ブレーキ油等の動・植物油に最も優れた耐性を有する材料です。 3種
S503 シリコーンゴム 優れた耐油・耐寒性を有し、合成ゴムの中で最も広い温度範囲に使用できる材料です。 4種C
F201 ふっ素ゴム 合成ゴムの中で最も優れた耐油、耐薬品、耐熱性を有する適用範囲の広い材料です。 4種D
T767 アクリルゴム ニトリルゴムより耐熱性が高く、特にエンジン油、ギア油、トルコン油等に優れた耐熱性を有する材料です。 4種E※
E116 エチレン プロピレンゴム クーラント油、スチーム、植物油、ブレーキ油、難燃性植物油に耐性を有する材料です。ただし、鉱油には使用できません。 5種※
G607 水素化ニトリルゴム ニトリルゴムよりも、耐熱、耐油、耐候性、高強度、耐摩耗性に優れた材料です。 H *
U565 NOKアイアンラバー(ウレタンゴム) 耐摩耗性、耐油性に優れた特性を持っています。しかし、化学的に活性な油に対しては劣化する場合があります。  
U801 NOKアイアンラバー(ウレタンゴム) U565とほぼ同等の性質を有し、U565よりも硬度が高く、耐圧性、耐摩耗性に優れた材料です。  
その他
推奨材料
A980 ニトリルゴム A305とほぼ同等の耐油性を有し、特に耐寒性に優れた材料です。  
A746 ニトリルゴム ニトリルゴムの中で優れた耐ガス性・耐候性を有し、日本LPG検査協会規格をクリアした材料です。  
S740 シリコーンゴム シリコーンゴムの中で、特に耐熱水・耐水蒸気性に優れた材料です。また圧縮永久歪も優れています。  
FL68 ふっ素ゴム F201と同様な耐油、耐薬品性、耐熱性を有し、特にふっ素ゴムの中で優れた耐寒性を持った材料です。ガソリン用に広く使用されています。  
FP29 ふっ素ゴム 耐熱水性、耐水蒸気性、耐LLC性に優れた耐性を有する材料です。また電気・ガス温水器等、コージェネレーションシステムに求められる高温、高濃度の耐塩素水性にも優れた耐性を有します。  

※4種Eと5種は、JASOF404の標準材料です。 * 材料Hは、NOKの材料記号の呼称です。

Oリングのつぶししろとみぞ部寸法

つぶししろは、密封機能上から、約8%を最小値とし、ゴム材料の圧縮永久歪の限界から約30%を最大値としております。みぞ部寸法については、カタログ寸法表中のみぞ部寸法をご参照ください。

みぞ部の表面粗さ

Oリングの接触する部分の表面粗さを下表にします。

機器の部分 用途 圧力のかかり方 表面粗さ
Ra Rz
みぞの側面 及び底面 固定用 動脈なし 平面 3.2 12.5
円筒面 1.6 6.3
動脈あり 1.6 6.3
運動用 バックアップリングを使用する場合 1.6 6.3
バックアップリングを使用しない場合 0.8 3.2
Oリングの シール部の接触面 固定用 脈動なし 1.6 6.3
脈動あり 0.8 3.2
運動用 0.4 1.6
Oリングの 装着用面取り部 3.2 12.5

高圧時の使用(すきまとはみ出し)

Oリングは材料の圧縮応力によって密封機能を発揮しており、さらに密封流体の圧力によってセルフシールの効果も発揮します。したがって、原則的には圧力の限界は考えられないわけですが、実際にはOリングの使用箇所には、かならずすきまが生じ、密封対象流体の圧力によって、そこにOリングが食い込んで機能が維持できなくなる場合があります。 すきまが限界以上となる場合にはバックアップリングの使用をおすすめします。溝の設計、バックアップリングの要否については最寄りの営業所にご相談ください。 バックアップリングは両方から圧力のかかる場合、Oリングの両側に装着し、一方向から圧力のかかる場合には圧力と反対側に1個装着します。バックアップリングの形状にはエンドレス、バイアスカット、スパイラルの3種類があり、使用上の効果からはエンドレスが最も優れていますが、装着の点からはバイアスカット、スパイラルの方が便利です。

穴部および軸部の面取り

装着にあたり、シリンダやピストンロッドの角は、Oリングに傷をつける恐れがありますので、かならず表をご参照の上テーパーを施してください。尚、装着時の軸のかたむきによるOリングのかじりを防止するためにL寸法を(G+b)以上にとることをお奨めいたします。

Oリング呼び番号 a最小 b
JIS JASO 15°の場合 30°の場合
P 3 ~P 10 P 10A~P 22 P 22A~P 50 P 48A~P150 P150A~P500 1003~1035 2010~2071 3022~3150 0.9 0.9 1.1 1.3 1.5 3.4 3.4 4.1 4.9 5.6 1.6 1.6 1.9 2.3 2.6
G 25~G145 G150~G500 3025S~3145S 1.1 1.3 4.1 4.9 1.9 2.3
NOK S規格 S  3~S150         SS22~SS12 0.9 3.4 1.6