オイルシール

解説編

オイルシールの構造と各部の働き

オイルシールの構造を下図に、各部の働きを表に示します。

オイルシールの構造と各部の働き

オイルシールの構造と各部の働き

名称 各部の働き
リップ部 リップ先端部 リップ先端は、くさび状の断面形状をなし、軸表面に押し付けられて流体を密封する働きをする。
シールリップ部 シールリップは、フレキシブルなエラストマーで出来ており、機械の振動や密封流体の圧力変動に対し、安定した密封作用を保つように設計されている。ばねはシールリップ部の軸への押し付け力を長期間維持する。
ダストリップ部 ダストリップは補助的に作られたばねなしリップで、ダストの進入を防ぐ働きをする。
はめあい部 はめあい部は、オイルシールをハウジング穴に固定すると同時に、オイルシールb外周面とハウジング内面との接触面からの流体の漏れ、またはダストの侵入を防ぐ役目をする。なお、金属環はオイルシールをハウジングに固定するためのはめあい力を確保する。

オイルシールの主な種類と特徴、関連規格

特徴 NOK型式/形状 ISO JIS JASO
S型 油用でダストがない場合のシール SC Type 4 タイプ1 S
SB Type 1 タイプ2 SM
T型 油用でダストがある場合のシール TC Type 4
保護リップ付
タイプ4 D
TB Type 1
保護リップ付
タイプ5 DM
V型 グリース、またはダストのシール VC G
VB GM
K型 グリース用でダストがある場合のシール KC P
KB PM

(注)JIS:日本工業規格、JASO:日本自動車工業規格、ISO:国際規格

オイルシールに使用される材料

オイルシールに使用される主なゴム材料、ばねおよび金属環材料は下表のようなものがあります。

主要ゴム材料

主要材料 ゴム材料の特徴 使用温度
(耐熱性)
材料 コスト
ニトリルゴム (NBR) ・材料コストが安価。
・汎用性があり、もっとも使用量が多い。
・使用温度(耐熱性)は限定される。
~100℃ 材料コスト
アクリルゴム (ACM) ・ニトリルゴムに比べて耐熱性が優れる。
・ブレーキ液、燃料油の耐油性が劣る。
~130℃
シリコーンゴム (VMQ) ・アクリルゴムに比べ耐熱性が優れる。
・耐寒性が最も優れる。(-60℃~)
・耐アルカリ性や耐水性は劣る
~150℃
フッ素ゴム (FKM) ・耐熱性が最も優れる。
・各種潤滑油、燃料油に最も幅広く適合。
~180℃

ばねおよび金属環材料

密封対象\
ばねおよび金属環材料
ばね 金属環
標準材料 専用材料 標準材料 専用材料
JIS G3521 SW
(硬鋼線)
JIS G3522 SWP
(ピアノ線)
JIS G4309 SUS
(ステンレス鋼線)
JIS G3141 SPCC
(冷間圧延鋼鈑
および鋼帯)
JIS G3131 SPHC
(熱間圧延鋼鈑
および鋼帯)
JIS G4305 SUS
(冷間圧延ステンレス鋼鈑)
JIS G4307 SUS
(冷間圧延ステンレス鋼帯)
304 316 304 316
潤滑油・ グリース
× ×
水蒸気 × ×
海水 × × × ×
× × × ×
アルカリ × ×

○:使用可能 ×:使用不可

オイルシールの選定方法

オイルシールの機能を十分発揮させるには使用条件に最も適した形状と材料を選定する必要があります。一般的には

  • 形式選定
  • リップ材料選定
  • 金属材料選定
  • 寸法選定

の手順で行います。
NOKでは用途に合わせ、豊富なバリエーションを用意しておりますので、カタログを参照頂くか、最寄の営業所にご連絡下さい。

オイルシール取付け部の設計について

軸、ハウジングの形状、粗さ等はオイルシールの性能を左右するため、一般的な軸、ハウジングの設計のポイントについて紹介します。

軸、ハウジングの設計のポイント

取付け部 設計のポイント・推奨値 備考(注意事項)
材質 機械構造用炭素鋼を推奨 鋳鉄はピンホール発生の可能性があるため極力使用しない
硬さ 30HRC以上  
粗さと 加工方法 ・0.32~0.1μmRa、2.5~0.8μmRzを推奨
・グラインダ仕上げまたはエメリーペーパー仕上げを推奨
軸の加工痕に方向性があると漏れ原因につながる
面取り 軸端に面取りをつける  
ハウジング 材質 鋼、または鋳鉄を推奨 軽金属、樹脂は熱膨張が大きいため極力使用しない
内周面粗さ 外周金属:3.2~0.4μmRa, 12.5~1.6μmRz 外周ゴム:3.2~1.6μmRa, 12.5~6.3μmRz 内面の粗さが大きいと接触面に隙間ができ、漏れの原因となる